2011 (平成23) 東電原発損害賠償請求(JAグループ代理人)

忘れることは決してない、2011年3月11日の東日本大震災。そして、そこで起きた東京電力福島第一原発事故。被害を受けた農家の代理として、東京電力と交渉の出来る弁護士を探していたJAグループが、農林中央金庫の経営管理委員を務めていた久保利に、依頼してきた。原発事故で放射能漏れが起き、汚染の被害を受けた東北、関東地域を中心とする多くの農家を、各都道府県のJAグループがとりまとめ、その代理人として東電と交渉にあたることになったのである。

被災地を訪れ農家の方と話し、切実な現場の声を聞くたびに、日本を代表する大企業である東京電力の対応と、企業としての在り方に怒りがわき、何度も拳を握りしめた。地震や津波に対する十分な対策を講じず、原発は絶対安全だと言い続けた責任をとらない。東京電力の経営陣は「想定外」と繰り返すばかりだった。

奇しくも、福島第一原発1号機は、久保利が弁護士登録をした年と同じ1971年に運転を開始している。日本を良い国にしたいと願い、ガバナンスの観点から、透明性を保ち公正であるよう企業に求めて来た弁護士人生と同じだけの年数を重ねた原発で起きた事故。スモン訴訟事件で感じた企業への強い怒りが、40年経った今もまた、湧きおこる。

しかし、諦めるわけにはいかない。目の前に、切実な声がある。これからもガバナンス、ガバナンス、ガバナンスと、その重要性を訴えて行く。負けてはならぬと新たな決意を心に結んだ。

東電原発損害賠償請求